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福田 邦三 著 杏林書院 1,732円
私の感想:昭和51年当時すでに学校の安全管理上の問題点を鋭く記述している。この書で指摘されたことを採り入れておけば大阪池田市の小学校で発生した残忍な事件も未然に防げたかもしれない。学校教育関係者(特に安全管理者)には一読をお勧めしたい本だ。以下本文の一部分を抜粋して紹介します。 2005年4月26日
P156・・・日本の学校建築も、運動場に勝手に誰でも、車でも犬でも、はいれるようになっており、廊下も万人に開放されています。児童・生徒が安全に課外活動や、自由ができるように運動場は堅固に囲み、学校の門や玄関は別の所に設けることをお勧めします。・・・中略・・・
正門には必らず守衛をおき、犬、暴漢等から学校の安全を確保すべきでしょう。・・・(原文のまま)
中村 彰彦 著 角川書店 1,700円
日清戦争前から日露戦争をへて昭和五年の「ロンドン海軍軍縮条約」調印にいたるまでを元連合艦隊参謀長「島村速雄」(大正12年66歳にて没)を中心に日本海軍の栄光の時代を記述している。
P317から
ロンドン海軍軍縮条約が調印されると、日本は補助艦の総トン数においても、対英米七割という絶対的不利を余儀なくされる。
「これでは、対英米戦争は戦えぬ」
とする海軍の空気を知った東郷(平八郎)は、ある日八十四歳の老躯に怒りをみなぎらせ、海軍省に乗りこんで怒鳴った。
「軍令部は毎年、対米作戦計画を天皇に奉っているではないか。いまさら対米戦争ができぬというなら、海軍は陛下に嘘を申し上げていたことになる。また東郷も毎年この計画に対してよろしいと奏上していたが、そうなると自分も陛下に嘘を申し上げていたことになる。いまさらそんなことが言えると思うか!」
聖将、神将とたてまつられてきた東郷は、ちと長生きをしすぎた。以後の海軍は、アメリカとは戦えないと明言する勇気を失って、太平洋戦争への道を猛進することになる。
昭和八年(1933)九月二十二日に軍令部令が改正され、軍令部長改め軍令部総長の権限が強化された直後から、加藤(友三郎)の衣鉢をついだ条約派の人々が海軍から一掃され始めたことは、まだ民族の記憶に新しい。
そのような狂乱の時代を見ることなく、島村速雄は日本が世界の一等国の仲間入りを果たしたところで忽然と逝った。その意味でからは、幸せな海将だったといえるかも知れない。
日本をダメにした官僚の大罪 (2002年11月5日)
講談社 刊 後藤 英彦 著 1,700円
P102 欧米の流儀を採り入れながら、欧米のルールを嫌うのではいろいろ無理が生じる。文明を真似ることはできても、土俗的な文化は容易に変えられない。
思うに、文化とは国のような大きな人の集団の、共通のくせのことである。個人の習いはくせであるが、集団で住む人々に共通するくせは文化と呼ばなければならない。
P105 維新の志士、河上彦斎の流れをくむ京都の武芸道場の道訓にこうある。
第一条 自分のためには汗を流せ
第二条 人のためには涙を流せ
第三条 国のためには血を流せ
三流の訓という。政治家たる者は、こうでなくてはならない。
P107 騎士道はその点武士道と異なる。主人と家来という関係のほかに神の存在が意識されるから、主人、家来、神のいわば三角関係となる。・・・中略・・・
日本企業で社長や幹部が不正なことを命じたら、抑制装置としての神をもたないから、会社ぐるみの悪徳に手を染める図となる。しかも、それはなにも会社の専売特許ではない。政・官・大衆の共通文化で、不正、裏切りの類は日常化している。政治家秘書のたかり、外務省不正事件、雪印食品詐欺牛肉事件、法の華三法行を生み出すこの国は、まるで悪徳の巣窟で、ぼんやりしていると貧乏籤を引かされる。
P110 与党議員のだれでもがルールに阻まれずに官僚と接触し、影響を与え得る日本の政策プロセスは、いわば貸し借りの世界で、企業にたかる総会屋とどこに変わりがあるであろう。情報公開によって接触のプロセスを明らかにする必要がある。
太平洋戦争の謎 魔性の歴史=日米対決の真相に迫る
日本文芸社 刊 佐治 芳彦 著
太平洋戦争は本当に無謀な戦争だったのか?
黒船来航以来のアメリカの対日戦略を分析し、太平洋戦争が起こった原因と勝敗の明暗を分けた重要海戦を中心に敗戦に至るさまざまな謎と疑問を鋭く追求する。・・・本書裏表紙より
P38
当時のアメリカ、というよりもルーズベルトにとっては、イギリスの崩壊を食いとめるのが最大の急務であった。・・・中略・・・だが、イギリスを助けるにはドイツを叩かねばならない。そのためには、アメリカが第二次世界大戦に参戦しなければならない。ところがギャラップ世論調査では国民は圧倒的に参戦反対である。そうした世論をいっきょにくつがえし、国民を戦争に引きずりこむには、なにかドラスチックな事件が必要だ。第一次世界大戦のアメリカ参戦の引き金となったルシタニア号の撃沈事件のように。つまり相手にさきに手出しをさせ、防衛戦争という形をととのえなければ、国民を説得することができない。もちろん第一次世界大戦でコリたドイツは、それにひっかからず、たび重なる北大西洋でのアメリカ海軍の挑発にものってこない。とすれば、残るのはやはり日本である。このナイーブな国民はすぐ興奮する。そこで日本を戦争に駆りたてるように圧力を加える。そして、日本から戦争をしかけさせれば、同盟関係にあるドイツは自動的にアメリカに宣戦せざるをえない・・・・。
P39
つまり、アメリカというよりも、ルーズベルト大統領にとっては、日独伊三国同盟の締結は、もっとも好ましいものだったということになる。・・・中略・・・
三国同盟締結以降の日米交渉は、アメリカにとっては、いわば太平洋戦争の火ぶたを日本にいかにして切らせるか・・・・・しかもイギリスがどうにもならなくなるまえに・・・・・という技術的な問題に絞られることとなる。
アメリカは日本の諸決定(譲歩条件をも含めて)を、暗号解読を通して十分知っており、ハワイの日米首脳会談受諾を匂わせるとか、野村大使との会談を熱心に続けるとか、いわば、日本をむずがる赤ん坊をあやすように取り扱い、アメリカにとり都合のよいタイミングに、日本から戦争をしかけさせることにつとめたのである。
P45
ハル国務長官の日本への不信感を決定的にしたのは、長官の知らない国務省の暗号解読班の意図的?なある操作である。・・・中略・・・
アメリカの暗号解読班は、それまで何百通の日本外交暗号を正確に解読していた。だが、日米交渉の大詰めにいたって、傍受した日本の甲案について、きわめて初歩的な・・・・それだけに電文の意味を完全に誤解させるような「誤訳」を一個所だけでなく、ほとんど全文にわたって 犯したのである。・・・中略・・・
「・・・中略・・・日米関係を調整するため日夜たゆまぬ努力をなしつつあり」という訓電の冒頭部分は「・・・中略・・・わが国民はその関係調整について確信を失いつつある」とみごとに誤訳されている。この「・・・関係調整について確信を失いつつある」という部分が、ハル長官の判断をもっとも誤らせたといわれているから重大だ。・・・中略・・・
この誤訳に加えて、さらに日本にとって不幸だったのは、ハル長官の極東政策担当のスタッフが、いわば中国ロビーとも言うべき人々によって占められていたことだろう。したがって、知日派のグルー駐日大使の客観的な情報は、すべて親日的な偏見として黙殺されていた。
(2002年8月26日)
連合艦隊戦訓48 戦訓から学ぶ発想の転換
光人社NF文庫 佐藤 和正 著
敵を知り己を知れば百戦危うからず。
時代の変化をいち早く読み、発想の転換を迫られるビジネス社会(戦場)で勝ちぬき、繁栄(勝利)をもたらすための戦略・戦術の指針・・・日本海軍が太平洋戦争で得た戦訓の中から、勝負の決め手となった<成功と失敗>の事例をとりあげ、企業戦線の発想に活かす話題の書。
P64
状況判断は、指揮官の最も重要な責務である。そのためには、いかなる情報も無視してはならないし、部下の進言を軽んじてはならない。繊細な観察と、怜悧な分析力と、チャンスには勇断をもって当たる決断が要求されるものである。そこには指揮官の資質が重大な要素として問われるゆえんがある。
P134
日本海軍は、有利な戦訓は大事にするが、失敗の戦訓、不利な戦訓には目をつぶって研究しないという傾向があった。いやなものは、だれでも研究したくないものだが、それが作戦や戦闘に少なからず影響していた。
戦訓は、結果を事前に教えているものだけに、これを存分に活用すべきであった。
想像力を働かせて歴史を読み解く
鳥居 民 著 草思社 刊 2,000円
コメント
日本には陸軍と称する軍隊と、海軍と称する軍隊の二系統の軍隊が存在していたようだ。
二つの軍隊が自己の組織の存続と発展にしのぎを削り、それぞれの軍隊が別々の仮想敵国をつくり自己の組織の拡張と保持を計り、国益を考えず自己の帰属する組織に対する忠誠心を基準に行動した。
陸軍と海軍は自分の国家予算を少しでも多く獲得したかった。このため真の国益のためにとるべき道をとらず日本を滅亡の淵に追いやった。軍人も含め官僚や政治家は自分の保身に努め責任ある言動をとらなかった。
現在においても省益あって国益無しと言われているが、日本は変わっていないと思いますね。(2001.10.10)
税法のあらゆる穴を知っていた男
立石 勝規 著 講談社 刊 1,600円 (01.5.26)
P166
脱税とは実は「最もばれやすい犯罪」ではないかと考えるに至った。理由は、ばれやすい「五つの宿命」を持っているからだ。・・・中略・・・
五つのうちの第一の宿命は「脱税とは税務署へ申告する所得のごまかしだから、確定申告をしなければ始まらない」ということである。
第二は、あれこれ複雑な方法を考えても、脱税の手口は、「収入をごまかすか、支出をごまかすか、それとも両方をごまかすかの三つしかない」単純な犯罪であることだ。
第三は、コンピューターを駆使して二重、三重の裏帳簿を作ろうとも、「本当の帳簿がなければ脱税できない」ことだ。本当の帳簿は脱税の決定的な証拠となる。
第四は、「脱税で得たカネを、足のつかない現金のままで置いておけない」ことだ。現金のまま自宅に置いていても、利子はつかない。脱税するような者にとっては、耐え難い苦痛のようだ。人間の欲が「落とし穴」を見えなくさせてしまう。
第五は、脱税とは麻薬のようなもので「なかなかやめらない」ことだ。脱税を繰り返せば繰り返すほど、発覚する危険性はどんどん高くなる。・・・中略・・・
以上の「・・・・ない」が脱税の宿命である。
P233
脱税の本当の「罪」は憲法に規定された国民の納税の義務違反や国家に対する詐欺行為ではなく、そのカネが社会に「モラルの崩壊」という汚染を広げていくことにあるのだろう。
金丸に渡ったゼネコンの裏ガネは、公共事業の受注や談合を陰からコントロールすることを促し、金丸自身の第二の脱税を生んだ。汚染はさらに中央から地方政界へと拡大していく。
今、マスコミをにぎわしている「そごう」の水島広雄氏も「ジャパンライン株買い占め」事件に関連してP122に登場しています。(平成13年5月27日)
脱税がいかに割に合わないかを思い知らせる本です。
竹村 健一 著 青春出版社 刊 1,500円 (01.05.30)
P20
「賢者は愚者に学び、愚者は賢者に学ばず」というのは、私の好きな言葉であるが、あなたもこの本を読み終えたら、すぐにも目の上のコブがとれたように視界が広がり、つかえていた胸のしこりがハラリと落ちる思いがするだろう。
P35
人生にリスクはつきものである。私もリスクはしょっちゅう背負っている。しかし、私は失敗を恐れない。なぜなら失敗をしなければ、人間は成長しないからである。
いつもいつも平穏無事な人生だけを願い、性質も穏やかな人たちばかりとつき合っていると、練りの足らない陶土で焼き上げた陶器のようにもろくてこわれやすい西洋皿になってしまう。
角のある人間とつき合うということは、そういう体質にならないための特効薬みたいなものといえる。
日本では、評論家は論壇とか、小説家は文壇、学者は学界・・・・といったように、ひとつのグループに属してしまうことが多い。
日暮硯 岩波文庫 絶版中 昭和16年初版 (01.06.03)
現代の文書に親しんだ者には取っ付きにくく、使われている旧書体の漢字にも手こずりますが、わずか68ページの本です、一読をお勧めいたします。
「基礎 古文書のことば」 秋山 高志 監修 柏書房 刊 2,200円
凡そ事を作すには、須(すべか)らく天に事(つか)うるの心有るを要すべし。
志を立てて実績を上げるには、恥(内心の恥を含む)を知ることが肝要である。
P35
人須自省監 天何故生出我身 使我果供何用
我既天物 必有天役 天役弗共 天咎必至
省察至此 則知我身之不可苟生
人は須(すべから)く自ら省察すべし。「天何の故か我が身を生み出(いだ)し、我をして果たして何の用にか供せしむる。我れ既に天の物なれば、必ず天の役あり。天の役共(きょう)せずんば、天の咎(とが)必ず至らむ」省察して此に至れば則(すなわ)ち我が身の苟(いやし)くも生く可(べ)からざるを知らむ。
P41
立誠修其辞
其理一也
辞(ことば)を修めて其の誠を立て、誠を立てて其の辞を修む。その理一なり。
P52
慮事欲周詳
処事欲易簡
事を慮(おもんばか)るは周詳ならんことを欲し(周到綿密なることが必要だ)。事を処するは易簡ならんことを欲す(一たん考えが決まり、これを行うには手軽に片付ける事が必要だ)。
P104
聡明而重厚
威厳而謙沖
為人上者当如此
聡明にして重厚、威厳にして謙沖。人の上たる者はまさに此(かく)の如くなるべし。
謙沖・・・へりくだりわだかまりがないこと。
P160
身恒病者 不覚其痛
心恒病者 亦不覚其痛
身を恒(つね)に病む者は、その痛みを覚えず。
心を恒に病む者も、またその痛みを覚えず。
P192
不起妄念 是敬
妄念不起 是誠
妄念を起こさざるは是れ敬にして、妄念起こらざるは是れ誠なり。
P222
慎言処 即慎行処
言を慎む処(ところ)、即ち行いを慎む処なり。
「貞観政要」の政治学 布目 潮渢 著 岩波書店 (2001.7.2)
名君の誉れ高い唐の第二代皇帝、太宗が治国安民の政策について臣下とかわした問答集『貞観政要』は、皇帝学の教科書として東アジアの為政者の必読書となった。その歴史的背景を概説し、豊富な古典の引用をていねいに解読しながら、現代の政治、企業経営、処世術にも通ずる儒教思想の実践法を説きあかす。
はしがきより
太宗の実践の姿としては、まず臣下の諌言をよく受け入れていること。
もう一つの実践の姿としては、人材の登用がある。中略
たんなる自己陣営内の登用でなく、敵方からの登用がその特色である。
P61
知足不辱 知止不殆
足を知れば辱められず、止まるを知れば殆(あやう)からず。
P75
古来の帝王をよく看てみると、盛んな時があれば衰える時があるのは、ちょうど朝があれば日暮れがあるのと同様である。その衰えるのは、みな臣下が帝王の耳や目をおおいかくすために、帝王が時の政治の善悪をまったく知らないからである。そして忠正の者はなにも言わず、心がねじけておべっかのうまい者ばかりが、日増しに帝王のそばに接近している。そのようにして帝王が自分の過失を見ないのだから、滅亡するのは当然である。
P104
中略 皇帝の左右には、諫議太夫(かんぎたいふ)以下の諌言の専門官がひかえ、さらに大官には上奏権が認められ、皇帝は何か難点が認められると、侃々諤々の諌言を受けねばならない。明君と称せられる唐の太宗は、このような諌言機能をフルに活用した皇帝である。また太宗はみずから大官を集めて所見を述べ、大官の意見を聴取した。以上のような太宗の政治の実体の記録が『貞観政要』である。そして太宗の処置が明君としての賞賛を獲得したのは、それが公平であったからである。
P158
人臣の行いに、六正・六邪有り。六正を行えば則ち栄え、六邪を犯せば則ち辱められる。何をか六正・六邪と謂(い)う。
六正とはつぎの六つ。
@聖臣とは、事件が起こるきざしも現れず、兆候も起こらないのに、はっきりと存亡の危機を見極め、事件を未然に防ぎ、君主を超然として尊栄の地位におく人物である。
A良臣とは、虚心白意で、善行を進め、正しい道に精進し、君主に礼の本義を実践させる。さらに君主にすぐれた政策を献上し、君主の美点をさらに進め、その欠点を矯正する人物である。
B忠臣とは、朝は早く起き、夜は遅く寝て、職務に精励し、賢者を熱心に推挙し、昔の人の立派な行いをたびたび述べ、君主を励ます人物である。
C智臣とは、事件の成功失敗を明察し、早く危険を防いで救い、食い違いを調整し、失敗の原因を根絶し、禍を転じて福とし、君主に終わりまで憂いがないようにする人物である。
D貞臣とは、法律を尊重し、官職に就任した時、高禄を辞退し、賜物は人に譲り、衣食は節約を旨とする人物である。
E直臣とは、国家が混乱している時、おもねりへつららわず、あえて君主の厳しい顔を恐れず、君主の過失を面前で言える人物である。
六邪とはつぎの六つ。
@具臣とは、官職に安んじて俸禄を貪り、公務に精励せず、世俗に従って浮沈し、周囲の情勢を観望している者である。
A諛臣とは、君主の言葉はすべて善とし、君主の行為はみな可とし、こっそり君主の好みを探して君主に進め、君主の耳や目をよろこばせて迎合し、君主とともに楽しみ、後害を考えない者である。
B奸臣とは、心の中は陰険邪悪であるのに、外面は小心謹厳で、口が上手で顔色をやわらげ、立派な人物をねたみ、自分が推薦しようとする人はその長所をあげ、その短所を隠し、自分が推薦したくない人はその短所をあげ、その長所を隠し、君主の賞罰が正しく行われないようにする。このようにすれば君主の命令は行われなくなる。そういう者である。
C讒臣とは、その知恵は自分の欠点を隠すのに十分であり、その弁舌は自分の主張を実行させるのに十分であり、家庭内はばらばらで、外では朝廷で事件を起こす者である。
D賊臣とは、権勢を自分の思うままに使い、可否の規準を自分の都合のいいように変更し、自分中心に徒党をくみ、私財を増やし、君主の命令を勝手に変更し、自分の地位や名誉を高める者である。
E亡臣とは、へつらい言葉で君主におもねり、君主を不正義におとしいれ、仲間同士でぐるになり、君主の目をくらまし、白も黒も区別なく、是も非も一緒にしてしまい、君主の悪事を国内に広め四隣の国に宣伝する者である。
P221〜223抜粋
人は良い香りも悪い臭いも、そこに久しくおればわからなくなる。
人は誰でも壮年を過ぎると、諌言してくれる者を敬遠し、自分に快いことを言う人を近づけるようになる。これが老化の始まりといってよいだろう。
人事が公正に行われず、管理者の好悪や一人の毀(そし)りで左右されては、良い人事管理はできない。
小説 後藤新平 行革と都市政策の先駆者
郷 仙太郎 著 学陽書房 人物文庫 (2001.7.2)
東北の没落平民から身を起こし医師、行政マンを経て台湾・満鉄の経営、東京市の大改革、関東大震災からの復興・・・。大胆な先見性をもとに新しい政策を次々に打ち立て、行革を断行した後藤新平。
無私と実行力に貫かれた生涯を生き生きとえがいている。
P23
「会議に出ている以上は、下手でもいいから自分の考えをひとことくらい喋れ。黙っているだけの奴は会議に出るな」
P75
組織の中にいるときは、いざというときは組織が守ってくれると思って帰属意識をもっているが、実際には組織は新平(後藤新平)を守らなかったのである。むしろ共に闘ったのは、一面識もない人たちであり、その動機はお互いに知っているかどうかではなく主張が共通であるかどうかだった。
P108
「世の中を悪くしているのは、藩閥、学閥、派閥という三つの閥だ。人物や実力を見ないで出身や学歴、あるいは親分子分の関係で人を見ているようではわが国の将来は危うい」
P307
力がない奴、働く気持ちがない奴ほど、閥をつくる。そういう風潮が蔓延するようでは、世の中は進歩しない。政策形成より派閥や組織維持を優先するなど愚の骨頂だ。
東郷茂徳 日本を危機から救った外相
裏表紙の要約から
先進諸国と夜郎自大の日本人の間に立って太平洋戦争回避のために苦闘し、力及ばず開戦にいたると本土決戦を呼号する軍部に抵抗し、鈴木貫太郎内閣の外相として終戦のために獅子奮迅の働きをした硬骨の外交官・東郷茂徳。
卓越した国際感覚と交渉能力を持った平和主義者でありながら、戦犯として不遇のうちに忘れられた人間像に迫る力作伝記小説。
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