私のブログ記事
故 阪田 精男 先生の「思い出」
この文章は 1992年1月に発行された近畿税理士会茨木支部の会報
「近税いばらき」に阪田精男先生が寄稿されたものです。
ご遺族の許諾を頂きここに掲載させて頂きます。(2008年7月9日)
阪田精男先生と先の大戦で亡くなった皆様のご冥福をお祈り申しあげます。
「思い出」
阪田 精男
私は神も霊の存在も信じていない。然し、 然し、・・・しかし、
召集でニューギニアへ曲射砲隊として参戦し
た時、火力、装備の差は今回の湾岸戦争の比
ではなく、疫病と糧秣不足で進路を阻まれて 阻まれて・・・はばまれて
全軍自決を覚悟した時、敵の包囲を破り退却
しろとの命令が出た。山上に布陣し、未明の
友軍の突撃の援護射撃をしたが、発射しても
火薬には湿気が入って一挙に燃焼せず、弾が
真っ赤な尾を引いて目の前に落ちる始末。先 真っ赤な・・・まっか
に敵が放置した弾薬が利用可能故、その補給
依頼に早朝、本部にＭと山頂の弾幕地帯を突
破して行き、谷間の間道を縫っての帰路、Ｍ
は再三の私の叱炫にも遅れて仲々追いて来ず、 追いて・・・ついて
やっとのことで、陣地の山麓に辿り着いたそ 辿り着いた・・・たどりついた
の時、未明の射撃失敗が敵に陣地を教える結
果となり、敵機の編隊爆撃を受け、陣地は禿 禿・・・はげ
山と化し隊は数名を残し爆死した。私を救っ
たＭは後日負傷し、その生死は知れない。退
却途中の渡河は黎明に河口近くを、５、６名
ずつ肩を組み胸まで漬って渡る。山頂の降雨
で瞬時に増水し、突然頭の先を浮き沈みしつ
つ、流されて死んでいく様子を対岸のジャン
グルで恐怖の眼で屡々垣間見た。その後、 屡々垣間見た・・・しばしばかいまみた
私は本部と先行して、暗夜谷間の川を腰まで
漬って渡河したが、後続が来ず夜営した。降 漬って・・・つかって
雨による増水があったのか、爆撃を逃れた友
は皆この川で流されて不帰の人となった。
其の後数々の試練を越えて帰国し栄養失調
を直し、会社へ就職したが、長らく務めた会
社の社長には到底追いていけず退職した。社 追いていけず・・・ついていけず
長や関与会計士より度々復職を頼まれたが断
りつづけた。数年後、その社長は病死した。
その死亡の三ヶ月前、続いて一ヶ月前、そし
てその当日、社長は私の夢枕に立った。翌日
の新聞に死亡通知が掲載されていた。私は今
だに毎年盆には天王寺へ経木を流しに行
それ以来夢枕に立つことはない。
人の生死は紙一重で、運悪く戦病死された
百分の九十九の方々に対し冥福を心から祈り
つつ、私は人生に運や偶然を越えた何かの存
在を否定することは出来ない。
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先生のご子息、公認会計士・税理士阪田眞二先生から次のようなメッセージを頂きました。
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父の「思い出」懐かしく読みました。
税理士会から原稿依頼を受けて、難しい顔をして
書いていたのを思い出します。
私が読んでも意味難解で、一部、私が「この順番に変えた方がいいで」とか
言ったことを覚えています。
ありがとうございました。
叱炫については、こんな言葉があるかどうかわかりません。
税理士会の茨木支部だよりは、上記の言葉通りです。
父の手書きの原稿は手許にはなく、確認のしようがありません。
阪田 眞二 （2008/7/10)
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参考書籍
「死の島」ニューギニア
極限のなかの人間
尾川正二 著・・・・私のブログ記事
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「地獄の日本兵」
ニューギニア戦線の真相
新潮新書 飯田進 著 ・・・私のブログ記事
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「海軍陸戦隊ジャングルに消ゆ」
戦誌刊行会 渡辺哲夫 著・・・私のブログ記事
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「海軍陸戦隊ジャングルに消ゆ」から・・・
「ジャワは天国、ビルマは地獄、生きて帰れぬニューギニア」
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